いきなりですが、2つの質問をさせてください。 まず1つめ。あなたは、会社を存続させるために次の4つの中で何が一番重要だと思いますか?
- 顧客
- 不動産
- 現預金
- 仕入先
2つめの質問です。あなたは、「借金は悪」だと思いますか? 少しの間、考えてみてください。
小さな会社の資金繰りや財務といった「お金」に関する悩みは、多くの経営者が抱えています。
実のところ、多くの経営者がこれからお伝えするような「お金の本質」を知らずに経営しており、そのせいで絶えず不安を感じているケースが非常に多いのです。
会社存続に最も重要なものは何か、そして小さな会社がとるべき超シンプルな財務戦略とはどのようなものか。
借入を味方につけることで、経営は驚くほど楽になります。
会社存続に最も重要なのは「現預金(キャッシュ)」
最初の質問の答えですが、会社の存続に最も重要なのは、「現預金(キャッシュ)」です。
仮に売上が何億円あろうと、立派な不動産を所有していようと、明日の支払いができなければ会社は存続できなくなります。
- スタッフの給与が払えなければ、組織は回りません
- 仕入先や外注先へ支払えなければ、商品を用意できません
- 家賃が払えなければ、事務所を維持できません
逆に言えば、たとえ売上が一時的にゼロになっても、手元にキャッシュが潤沢にあれば、これらの支払いを継続して会社を維持できます。
コロナ禍を生き抜いた飲食店の中には、まさにこのキャッシュの力で存続した例が多くありました。
しかし、多くの経営者は本業の売上アップやサービスの提供には一生懸命ですが、資金繰りや財務には無頓着になりがちです。
お金の管理が行き当たりばったりになると、結果として本業にも支障が出てしまいます。
中小企業の超シンプル財務戦略:借りられるだけ借りる
結論からお伝えします。中小企業がとるべき超シンプルな財務の考え方は、以下の通りです。
「借りられるだけ借りていいから、キャッシュを多く持つ。そして資金繰りに余計な労力を取られず、本業に集中せよ」
なぜ、これほどまでに借入を推奨するのか。
それは、資金繰りが苦しくなると経営者に深刻なマイナスの影響が出るからです。
1. 「時間」の喪失
金策に走り回ったり、金融機関と折衝したり、そのための資料を作ったり……。
さらには取引先に「支払いを待ってほしい」と交渉する時間は、本業にとって1円の利益も生みません。
経営者がこうした「非生産的な時間」に追われることは、会社にとって大きな損失です。
2. 「経営者のメンタル」への深刻なダメージ
私はかつて司法書士として多くの多重債務者の方々と接してきました。
その経験から言えるのは、「お金の悩みは本当に苦しい」ということです。
「次の返済はどうしよう」「従業員の給料をどう工面しよう」と悩み始めると、頭の中はそのことで一杯になり、本業が手につかなくなります。
普段は強気な経営者であっても、お金の悩みで追い込まれ、最悪の場合は保険金で解決しようと考えてしまうことすらあるのです。
今、経営が順調でも是非、知っておいてください。
とにかく、キャッシュを多く集めて、資金繰りに苦しむことがないようにすることです。
目標とすべきキャッシュの量は「月商3ヶ月分」
では、具体的にどれくらいのキャッシュを持つべきでしょうか。
一つの指標として、「月商の3ヶ月分」を目標にしてください。
例:年商1億円の会社(平均月商 約800万円)であれば、約2,500万円
業種にもよりますが、銀行側の視点でも次のようなイメージを持たれています。
- 1ヶ月分:少ない
- 2ヶ月分:まあまあ
- 3ヶ月分:OK
3ヶ月分のキャッシュを常に確保できていれば、経営の盤石さは格段に高まります。
借入は「安心」を買うためのコスト
中小零細企業が手っ取り早くキャッシュを増やすには、銀行からの借入が最も現実的な手段です。
借入に抵抗を感じる経営者も多いですが、自力で利益を増やしてコツコツ貯めるよりも、融資によって一瞬で数千万円のキャッシュを増やす方が、経営のスピード感としては圧倒的に有利です。
「借りても結局返さなきゃいけないから同じでは?」と思うかもしれません。
確かに、いくらキャッシュが増えても、その分借金も増えます。
いずれ返済しなければならないわけですから、プラスマイナスは0と考えるかもしれません。
しかし、借入をする前後で比べると、手元のキャッシュが大幅に増えます。
この増えたキャッシュによって「圧倒的な安心」が買えるのです。
もし借金がどうしても嫌なら、借りたお金に手をつけず、そのまま返済に充てればいいだけのこと。
繰り返しになりますが、メリットは「安心して本業に専念できる環境」が手に入ることです。
利息をどう捉えるか
「利息がもったいない」と考える方もいるでしょう。
しかし、現在(2025年)の金利水準(1%台など)であれば、1,000万円借りても年間利息は10万円程度、月々約8,000円です。
月8,000円で「1,000万円分の安心」が買えると考えれば、決して高い買い物ではありません。
交際費を少し抑えるだけで捻出できる金額ではないでしょうか。
また、利息は経費になり、節税効果もあるため、実質的な負担はさらに少なくなります。
銀行は「晴れの日」にしか傘を貸してくれない
「今は順調だから、苦しくなってから借りればいい」という考えは非常に危険です。
銀行はよく「晴れの日に傘を貸して、雨の日に取り上げる」と言われます。
業績が悪化してからでは銀行も貸し渋りますし、借りられたとしても条件が悪くなる恐れがあります。
本業が好調で、時間的にも精神的にも余裕がある「今」こそ、将来の雨に備えて借りておくべきなのです。
借りるなら「悪くなってから」より「今」が良い理由
借入を勧めると、必ずと言っていいほど「そんなに借りて、もし返せなくなったらどうするんだ」という心配の声があがります。
その不安は非常によくわかります。
しかし、一度冷静に考えてみてください。もし将来、実際に業績が悪化したとき、あなたはどうしますか?
おそらく、多くの経営者は倒産を受け入れるよりも、なんとか借入をしてでも会社を存続させようとするはずです。
「借入をするくらいなら潔く会社を畳む」という決意をされている方であれば、無理に借りる必要はありません。
しかし、「最後まで抗いたい、会社を守りたい」と思うのであれば、追い詰められてから手を尽くすよりも、余力があるうちに資金を確保しておく方が、返済不能に陥るリスクをはるかに低く抑えることができるのです。
運用の注意点:借りたお金は「利益」ではない
一点だけ、肝に銘じておくべき注意点があります。
それは、「お金があるからといって無駄遣いしない」ことです。
借入で増えたお金は、あくまで「借りたもの」であり、稼いだ利益ではありません。
手元の残高が増えたからといって、衝動的に高級車を買ったり、無謀な設備投資をしたりすれば、返済が負担となり経営を圧迫します。
キャッシュはあくまで「守りの盾」として保有してください。
まとめ
中小企業がとるべき資金繰り戦略をまとめます。
- 会社存続で一番重要なのは「キャッシュ」である
- 借入を積極的に活用し、キャッシュを厚く持つ(月商3ヶ月分が目安)
- 資金繰りを安定させ、経営者のリソースをすべて本業へ集中させる
無借金にこだわって資金不足のリスクに怯えるよりも、戦略的に借入を行い、余裕を持って経営に取り組むことこそが、真の業績アップへの近道です。
将来の不安を解消し、攻めの経営に転換していきましょう。

