小さな会社が大きな会社に勝つための「ランチェスター戦略」とは

小さな会社が大きな会社とまともに正面から戦ったら、どうなるでしょうか。答えはシンプルで、ほぼ確実に負けます。

資本力も人員も違う相手に同じ土俵で勝負を挑んでも、勝ち目はありません。

だからこそ、戦い方を考える必要があります。

この記事では、小さな会社が大きな競合に勝つための戦略として知られる「ランチェスター戦略」を、実例を交えながらわかりやすく解説します。

目次

ランチェスター戦略とは何か

ランチェスター戦略はもともと戦争の理論で、それをビジネスに応用したものです。

一言で言えば、弱者が強者に勝つための戦い方の原則です。

資本力や人員で劣る小さな会社が、大きな競合に勝つためのヒントがここに詰まっています。

数で負けても戦い方で勝てる

戦争で兵士が多い軍と少ない軍が正面から戦えば、多いほうが勝ちます。たとえば10対3で真っ向からぶつかれば、10のほうが勝つのは当然です。

では3の側はどうするか。答えは「まともに正面から戦わない」ことです。いわゆるゲリラ戦に持ち込むわけです。

10対3でも、10のうちの1人だけを引き離して1対3の局面をつくれば、そこでは勝てます。

相手の戦力を分散させて、こちらの戦力は一点に集中する。これがランチェスター戦略の核心です。

ビジネスへの応用

全国展開するチェーン店と、個人経営の小さな飲食店が同じメニュー・同じ価格で戦えばどうなるでしょうか。勝てるわけがありません。

だから個人店は「自分が勝てる領域」に絞って戦う必要があります。

具体的には、次の3つの軸で「絞り込む」ことが基本となります。

  • 商品・サービス:ライバルが参入していないニッチな分野に特化する
  • 商圏・エリア:営業エリアを広げるより狭く絞り、その狭いエリアでシェアNo.1を目指す
  • 顧客ターゲット:「誰でもOK」ではなく、特定の悩みや困りごとを持つ人に絞る

ランチェスター戦略の本質は「一点集中せよ、絞れ!」この一言に尽きます。

なお、ランチェスター戦略をきちんと体系的に学ぼうとすると、シェア目標などの細かい数値基準も出てきて、それなりに奥深い理論です。

ただ、まずは考え方として「一点集中、絞れ!」を押さえておくだけでも、十分に実践で活かすことができます。

カルピス(経営資源)は薄めるな

ランチェスター戦略を実践する上でとても大切な考え方が、「カルピスは薄めるな」というものです。

カルピスの原液をたくさん飲みたいからと水でどんどん薄めていったら、結局ただの水になってしまいます。

小さな会社はもともと「ヒト・モノ・カネ」という経営資源が少ないため、薄めるとさらに弱くなります。

だからこそ、できるだけ集中して使うことが重要です。

① 商品・サービスを絞る

まず、扱う商品やサービスを絞ることを考えましょう。これには2つの理由があります。

クオリティが上がる

ラーメン屋を例にすると、醤油・塩・味噌・豚骨・つけ麺すべてを最高水準にするのは難しいです。

1種類に絞って磨き上げたほうが、圧倒的に質が上がります。

専門性がお客さんに伝わる

同じくラーメン屋の例ですと、「何でも美味しいよ!」という店より「醤油豚骨専門」という店のほうが、初めて来るお客さんには魅力的に映ります。

新規集客において、専門性は強力な武器になります。

ただし、競合がほとんどいない地方や離島のような環境では、必ずしも絞る必要はありません。

他にラーメン屋がなければお客さんに選択肢がなく、逆に絞ることで機会損失になる場合もあります。

一方、都市部や、ネットで全国を相手にビジネスをするなら、専門性を打ち出さないと選ばれません。

ネットの場合はライバルが日本中にいて、お客さんも簡単に比較できてしまうため、選ばれる理由がよほどしっかりしていないと売れないのが現実です。

地域の特性を加味した上で、絞り込みを判断することが大切です。

② エリアを絞る

次に、営業エリアです。

多くのビジネスには商圏があります。店舗ビジネスはもちろん、他の業種でも「だいたいこのくらいのエリアのお客さんをターゲットに」という範囲はあるはずです。

ランチェスター戦略では、このエリアをギュッと絞ることを推奨しています。理由は2つです。

移動時間のロスを削減できる

営業、納品、現場作業など、業務上の移動には相応の時間がかかります。

しかし移動中は、それ自体が価値を生むわけではありません。

あちこち飛び回って仕事をしている感覚になりやすいですが、移動時間が長いほど、実際に成果を生む業務に充てられる時間は少なくなります。

建設系の業種では、片道1〜2時間かけて遠方の現場に通うケースも珍しくありませんが、近場の仕事に絞るだけで20〜30%の効率アップ、ひいては売上アップにつながる可能性があります。

広告効果が上がる

チラシを10万枚広範囲に1回撒くより、1万枚を同じエリアに10回撒くほうが効果的です。

何度も目にすることで「あそこか」と記憶してもらえ、認知と信頼が積み重なっていきます。

加えて、お客さんは遠方の業者より近くの業者を選ぶ傾向があるため、エリアを絞るだけで「選ばれやすさ」も自然と高まります。

さらに重要なのがタイミングです。

どんなに良い広告でも、お客さんが「買いたい」と思っているタイミングでなければ反応されません。

そのタイミングはこちらでコントロールできないため、繰り返し広告を届けることでチャンスを逃さないようにすることが肝心です。

「広い範囲に広告を出せばお客さんが増える」と考える経営者は多いですが、広いエリアに出してもその先にはライバルもいます。

薄めた戦力で戦うより、エリアを絞って集中投下したほうがライバルにも勝ちやすくなります。

もちろん、下請けが中心の業種では、近場の仕事だけを選ぶのが難しい場合もあるでしょう。

それは重々承知の上ですが、それでも「エリアをどう絞るか」については、一度真剣に考えてみる価値は十分にあります。

③ ターゲット顧客を絞る

最後に、お客さんの絞り込みです。

これはランチェスター戦略に限らず、マーケティングの基本として「顧客ターゲットを明確にしましょう」ということです。

着眼点は、お客さんの困りごと・悩み・欲求といった顧客心理を理解することです。

お客さんは商品やサービスそのものが欲しいわけではなく、それによって困りごとが解決したり、欲求が満たされたりするから買うのです。

その悩みや欲求を明確にして、「うちの商品やサービスならそれを解決できますよ」という形で伝えていくことが重要です。

「うちのサービスは誰にでも向いています」という訴求は、誰にも刺さりません。

余談ですが、私はかつてバーでウケ狙いに「カルピスをロックで」と注文したことがありました。

カルピスの原液はとにかく甘く、頭痛がしました。しかもそんなにウケませんでした。

本物のカルピスはちゃんと薄めて飲むことをお勧めします。

ランチェスター戦略の実例

最後に、ランチェスター戦略の実例を2つ紹介します。

事例① 函館のハンバーガー屋「ラッキーピエロ」

北海道南部に絞ってチェーン展開するハンバーガーレストラン。

独創的なメニューとボリューム、個性的な店構えで地元から絶大な支持を得ており、世界規模のバーガーチェーンを凌ぐ人気を誇ります。

入店まで1時間以上待つこともあるほどです。

仮に全国展開に乗り出せば資本力の差で太刀打ちできませんが、道南エリアに集中することで超大手にも勝てることを示す好例です。

事例② 造園業の経営者のチラシ集客

毎月同じエリアにコツコツと折込チラシを撒き続けた造園業の経営者の事例です。

3,000枚からスタートし、現在は月1万枚を継続。

最初はチラシ代とトントンの集客でしたが、徐々に認知が積み重なりリピーターも増加。

1年後にはチラシだけで月商100万円超えを達成しました。

自宅周辺数キロというエリアに絞ったことで移動も少なく、作業効率も高い状態を維持しています。

あちこちに手を広げず、同じエリアに何度もアプローチし続けた成果です。

まとめ

ランチェスター戦略は、中小企業の経営者が必ず知っておくべき考え方です。

難しいことは抜きにして、まずはこの一言を覚えておいてください。

「カルピスは薄めるな!」

商品もエリアも顧客ターゲットも、絞れば絞るほど強くなります。

大企業と同じ土俵で戦うのではなく、自社が勝てる領域に経営資源を一点集中させること。

それが、小さな会社が大きな成果を出すための唯一の戦略です。


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