中小零細企業に適した人事制度の作り方と失敗しない運用のコツ

小さな会社の経営者のほとんどが課題だと感じていながら、なかなか改善に着手できずにいるのが「人」に関する問題です。

求人や採用、賃金給与、教育、人事評価、チームビルディング、理念浸透など、人に関するテーマは多岐にわたります。

今回はその中でも「人事制度」に焦点を当てます。

「社員数も増えてきたし、そろそろ人事制度を作らないと」と考え、調べた末に大手コンサルティング会社へ依頼し、高額な費用をかけて人事制度を構築するケースがあります。

しかし、それでも大半は失敗してしまいます。

その理由は明確です。

そもそも中小企業の実態に合った制度になっていない。

あるいは立派な制度を作ったところで運用が続かず、形だけのものになってしまう、というパターンがほとんどだからです。

この記事では、中小企業における人事制度のポイントと、せっかく作った制度を機能させ続けるための運用のコツについて解説します。

人事制度の導入を検討している経営者は、多くの費用をかける前に、ぜひ一度ご確認ください。

目次

1. そもそも、人事制度とは何か

人事制度と一口に言っても、その中身は大きく3つの要素で構成されています。

  1. 等級制度:社員の現在のランクを示す仕組みです。「今は7等級だが、成長したので6等級に上がった」というように、社員の位置づけを明確にするものです。
  2. 賃金制度:等級や仕事内容に応じて、給与の水準を決める仕組みです。
  3. 評価制度:今期の成果やスキルをもとに、「Aランク」「70点」といった形で評価を行う仕組みです。

この3つを合わせたものが、いわゆる「人事制度」です。

中小零細企業に合った制度にすることが最重要

人事制度に関する書籍を読むと、いわゆる大企業向けの制度を前提に解説されているものが多く見受けられます。

しかし、それをそのまま中小企業に導入しても機能しません。

自社の規模や実態に合った制度に落とし込むことが、重要なポイントです。

2. 何のために人事制度を作るのか

等級制度・賃金制度・評価制度それぞれの詳しい内容に入る前に、まず押さえておくべきより重要な話があります。

それは、「そもそも人事制度は何のために作るのか」という、目的の部分です。

ここをしっかり押さえておかないと、せっかく作った制度も形だけのものになってしまいます。

なぜなら、人事制度を運用するのは、単純に面倒くさいことだからです。せっかく作っても、上司も部下も適当に済ませようとします。

「自社はこの目的のために人事制度を作り、しっかり運用する」という強い目的意識がなければ、結局は形骸化して終わってしまいます。

人事制度を作る8つのメリット

目的を考えるにあたり、まずは人事制度を作ることで得られるメリットを整理しておきましょう。

①社員が将来を見通せる

昇給・昇格の道筋が見えることで、将来への不安が減ります。将来性を感じられないことは、優秀な社員の離職理由にもなります。

②会社も社員も成長できる

評価制度の中で会社の目標と個人の目標をすり合わせることで、社員の成長と会社の業績向上が連動します。

③社員の動機づけにつながる

日々の成果やスキルを適正に評価する仕組みがあれば、給与という「人参」に頼らずとも社員のモチベーションを高められます。

④同じ方向を向いて仕事ができる

会社の目標をもとに個人の目標を設定するほか、評価項目に理念への理解を組み込むことで、社内の方向性を揃えやすくなります。

⑤管理者のマネジメント能力が高まる

人事評価を通じて部下の育成に関わることになるため、上司やマネージャー自身の育成スキルも磨かれます。

⑥給与・賞与の決め方にルールができる

これまで経営者の感覚で決めていた給与・賞与を、明確なルールに基づいて決定できるようになります。

⑦同一労働・同一賃金に対応できる

2021年から同一労働・同一賃金のルールが始まりましたが、役割等級(担っている役割の重さに応じて等級を分ける仕組み)を整備することで、「役割が違えば賃金も違う」という根拠を明確に示せます。

⑧採用における魅力の一つになる

入社後のキャリアプランを提示できる会社は、それだけで求職者にとって魅力的に映ります。

なお、⑥について補足すると、経営者の感覚で給与や賞与を決めること自体が悪いわけではありません。

会社の規模によっては、経営者の判断が妥当であることも少なくないからです。

ただし、今後組織としての体制を整えていく段階では、ルールに基づいた仕組みがあったほうが望ましいといえます。

人事制度の目的とは

ここまで8つのメリットを紹介しましたが、結局のところ人事制度を作る目的は何でしょうか。

基本的には、「社員の成長をサポートし、それによって会社も成長するためのもの」と捉えておくとよいでしょう。

もちろん目的の設定は会社ごとに異なって構いません。大切なのは、その目的を明確にし、常に意識し続けることです。

そうでなければ、いつの間にか「人事制度をとりあえず運用すること」自体が目的になってしまいます。

3. 失敗しない人事制度の運用のコツ

最後に、せっかく作った人事制度を機能させ続けるための運用のコツについてお伝えします。

評価の時期だけ動く運用を避ける

制度が形だけのものになってしまう原因は、社員も上司も人事制度の目的や重要性を理解しておらず、「上から言われたからとりあえずやる」という状態に陥っていることにあります。

人事評価の現場でよく見られるのが、次のようなケースです。

  1. 期初の目標設定の場面では、面倒に感じて適当に済ませてしまう
  2. 期中は評価制度のことをすっかり忘れて、特に何もしない
  3. 半年後、評価の時期になって慌てて思い出し、とりあえず評価シートを埋める
中小企業の人事評価制度でよくある課題として、期首の適当な目標設定、期中の放置、期末の評価負担という3段階の流れ

これでは、評価という「形」だけを整えているに過ぎません。期中に何も行動していないため、社員の成長にはつながらないのです。

力の入れどころを変える

運用を続けるコツは、期初・期中・期末それぞれの場面で力の入れ具合を変えることです。

  • 期初:上司も交えて、目標設定をしっかりと作り込む
  • 期中:定期的に上司とミーティングを行い、進捗を確認する
  • 期末:これまでの進捗をまとめるだけなので、大きな労力はかからない
中小企業の人事評価制度が改善された理想的な流れとして、期首の目標設定、期中のフォロー、期末のスムーズな評価という3段階を示す

期中でしっかり進捗を確認することで、社員は着実に成長していきます。

「期中に定期的なミーティングを行う時間などない」と感じるかもしれませんが、目的はあくまで社員に今期の目標を意識してもらい、成長の機会を思い出してもらうことです。

10分から15分程度の短い時間でも十分に機能します。

ここまでお伝えしてきた人事制度の目的をしっかり意識できていれば、こうした運用の重要性は自然と理解できるはずです。

まとめ

中小企業における人事制度は、等級制度・賃金制度・評価制度の3つで構成されています。

大企業向けの制度をそのまま導入するのではなく、自社の規模や実態に合った形に落とし込むことが大切です。

そして何より重要なのは、「何のために人事制度を作るのか」という目的を明確にし、常に意識し続けることです。

目的が曖昧なままでは、どれだけ立派な制度を作っても機能しなくなってしまいます。

さらに、期初・期中・期末で力の入れどころを変えて運用することで、制度は初めて機能し、社員の成長と会社の成長を同時に実現できるようになります。

自社に合った人事制度の設計や、運用が続く仕組みづくりについては、外部の専門家の視点を取り入れることで、より実効性のあるものにしていくことが可能です。


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