その努力、無駄かも…ボトルネックを把握しよう

日々、業績を伸ばすためにあれこれと知恵を絞り、忙しく動き回っている経営者の方は多いのではないでしょうか。

従業員の方々も、みんな忙しく働いていることと思います。

しかし、もしその並々ならぬ頑張りが、実は成果に結びつかない「無駄な努力」になってしまっているとしたら、これほど残念なことはありません。

無駄だった、で済むならまだいいのですが、場合によっては頑張ったことによって、かえって悪い影響が出てしまうことすらあります。

今回は「ボトルネック理論」という考え方を通じて、無駄な仕事の考え方や、どうすれば効率的に成果を出せるのかについてお話しします。

もともとは製造業の現場の業務改善で使われていたものですが、製造業以外のビジネスでも同じように使えます。

美容サロンや飲食店など、製造業以外での改善事例もご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

1.ボトルネック理論って何?

まず、ボトルネック理論について説明します。本当は「Theory of Constraints(制約理論)」というのですが、ここでは分かりやすく「ボトルネック理論」と言います。

ボトルネックとは何かというと、瓶などのくびれて細くなっている部分のことです。

砂時計をイメージしてみてください。砂時計の中央のくびれた部分がまさにボトルネックです。

砂時計のくびれた部分を「ボトルネック」として示し、業務全体の流れが最も制約の大きい工程によって決まることを表したイメージ図。

ボトルネック理論を簡単に言うと、「どんなに砂時計の上下の部分が大きくても、くびれている部分の幅でしか砂は落ちない。だから、もっと砂を落としたいのであれば、くびれを広げる必要がある。」ということです。

実際の製造現場での例を見てみましょう。ある工場で、以下のような流れ作業を経て出荷に至るラインがあるとします。

工程A・B・C・Dを経て出荷する製造ラインの例。工程Dの処理能力が最も低く、工場全体の生産量を制限するボトルネックになっていることを示したフロー図。
  • 工程A:1時間に30個作る
  • 工程B:1時間に20個作る
  • 工程C:1時間に40個作る
  • 工程D:1時間に15個作る

では、この工場が1時間に出荷できる個数は最大何個でしょうか?

工程A・B・C・Dを経て出荷する製造ラインで、処理能力が最も低い工程Dを赤色で強調し、工場全体の生産量を左右するボトルネックであることを示したフロー図。

答えは15個ですね。

工程Dが最大15個しか生産できないので、他の工程がどれだけ頑張っても、ボトルネックである工程Dが変わっていない以上、15個以上は出荷できません。

今回は、工程Dがボトルネックになっているということです。

もし、この工場が「出荷数を増やすためにもっと頑張れ!」と言って、工程Aが30個から40個生産できるようになったらどうでしょうか?

工程Aの処理能力だけを増やしても、工程Dがボトルネックのままであるため、工場全体の出荷量は増えないことを示した製造ラインのフロー図。

もうお分かりかと思いますが、やはり出荷数は15個のままです。

他がどんなに頑張ったとしても、ボトルネックが変わっていない以上、やはり15個以上は出荷できません。

一方で、工程Aの人手を工程Dに回し、工程Aを40個から30個に減らして、工程Dを15個から25個に増やせたとしたらどうなるでしょうか。

工程Aの処理能力を調整して人員を工程Dへ振り分け、ボトルネックだった工程Dの処理能力を改善することで、工場全体の生産性向上を目指す製造ラインのフロー図。

この場合、この工場の出荷数は20個になります。

工程A・C・Dの処理能力に対して工程Bの処理能力が最も低く、工場全体の出荷量を制限する最大のボトルネックとなっている「工程B」を赤く強調して示した製造ラインのフロー図。

「工程Dが25個作れるようになったのだから、出荷数も25個になるのでは」と思うかもしれませんが、そうはなりません。

今度は工程Bが20個しか製造できないため、工程Bが新たなボトルネックになるからです。

このように、ボトルネックは常に固定されているわけではなく、状況によって変化していきます。これが、ボトルネックという考え方の基本です。

2.ボトルネック理論のポイント

さて、ボトルネックの考え方を理解していただいたところで、重要なポイントをお伝えします。

最も重要なのは、「ボトルネックが存在する場合、それ以外の部分をいくら頑張っても意味がない」ということです。

先ほどの最初の例で、ボトルネックは15個しか作れない工程Dでした。この時に、他の工程がいくら頑張って生産数を増やしても、意味はありません。

意味がないどころか、全体としては悪い影響が出る可能性があります。

ボトルネック以外を頑張ることの弊害

製造業のケースで考えると、まず各工程で作ったけれど出荷できない製品、いわゆる「仕掛品」が増えます。

たくさん作ったにもかかわらず出荷できないので、現場に溜まっていってしまうのです。

結果、以下のような問題が起こります。

  • 物理的に保存スペースが圧迫される
  • 物が多いとそれだけ管理コストも増え、物の流れが悪くなる
  • 売れていないモノは「お金を眠らせてしまっている」状態になる

材料を仕入れて、人が加工して、水道光熱費をかけてモノを作るということは、当然お金がかかっています。

にも関わらず、売れずに在庫になっている状態は、投入した資金がすべて眠っているということです。

他にも、「生産数を上げよう」と無理をして残業をすれば、余計な人件費が発生している可能性もあります。

つまり、ボトルネック以外の部分をいくら頑張っても、かえって状況を悪化させるリスクがあるのです。

「全体最適」と「部分最適」

では、どうすればいいのかというと、ボトルネックの改善に集中することです。

先ほどの例で言えば、工程Dの15個を1個でも増やせるようにします。

ボトルネック工程を改善すれば、すぐに工場全体の出荷数増加に直結します。

そのためには、他の工程の生産数や効率が下がっても問題ありません。

繰り返しになりますが、問題はボトルネックにあるのであって、それ以外の部分が増えようが減ろうが、全体としての結果には関係がないからです。

先ほどの例でも、工程Aの人員を減らして工程Dに割り振ることで、全体としての出荷数が増加しました。これを「全体最適」と言います。

会社全体で成果を最大化することを目指す考え方です。逆に、各工程だけを見て個別に改善しようとすることを「部分最適」と言います。

従業員は自分に割り当てられた仕事で成果を出そうと頑張るものですが、それが結果として部分最適に陥ってしまうことは珍しくありません。

部分最適に陥ったときのデメリットは、先ほど説明した通りです。

会社全体を俯瞰して改善できるのは、経営全体を見渡せる立場にある経営者にほかなりません。

経営者はぜひ「全体最適」という考え方を意識しておくことをおすすめします。

3.実務での使い方

ここまでの説明で理屈は理解できても、「自分の会社でどう使えばいいのかわからない」という声はよく聞きます。

ここまでの例は製造業でしたので、「製造業以外では使えないのでは」という疑問もあるかもしれません。そこで、この点について解説します。

ボトルネック理論の実務での使い方には、大きく2つの視点があります。

  1. 現場の流れを良くする、という視点
  2. 自分の会社のどこに集中して改善するか、という、より抽象的で全体像を見る視点

①「現場の流れを良くする」という視点

1つめの「現場の流れを良くする」という視点は、極めて実務的な話です。主に製造業で使われる考え方ですが、製造業以外にも応用できます。

ポイントは、あくまで「流れ」をスムーズにするためのものだという点です。

A→B→C→Dという工程を経て完成する仕事であれば、製造業以外でも基本的に応用が可能です。

たとえば美容室や飲食店であっても、お客様が来店し、オーダーを受け、施術や食事を提供し、会計をして退店するという一連の流れがあります。

その流れの中でどこかに渋滞やお客様の待ち時間が発生している箇所があれば、そこがボトルネックになっている可能性が高いといえます。

解決策は、「全体最適」の視点を持つことです。

ボトルネック以外の部分の効率が多少落ちてでも、ボトルネックの改善に人員を回したほうが、結果として全体の流れは良くなるからです。

他の業種であっても、まずは仕事の流れの中で渋滞や滞留が起きている箇所を客観的に特定することから始めてみてください。

なお製造業については、近年は多品種少量生産、つまり一度に作る数は少ないものの種類を多く作らなければならないケースが増えています。

そのため、「どこにボトルネックがあるのか」がすぐには判断しにくいことも多くあります。

製造業における具体的な改善事例については、別の機会に詳しく解説する予定ですので、そちらも参考にしてください。

②「自分の会社のどこに集中して改善するか」という視点

次に、「自分の会社のどこに集中して改善するか」という視点についてお話しします。

こちらは、現場の流れというよりも、会社全体の業績を上げるために何に取り組むべきかという話です。

事例1:美容系サロンのケース

実際に相談を受けた美容系サロンの事例を紹介します。

このサロンからは「売上が下がったので、上げるための施策を相談したい。こういうキャンペーンはどうか、こういう新サービスはどうか」というご相談をいただきました。

そこでまず確認したのは、「そもそもなぜ売上が下がったのか」という点です。

話を聞いていくと、事情があって施術者が大量に退職してしまっていたことがわかりました。施術者が減ったことで施術数が減り、結果として売上が大きく落ち込んでいたのです。

ここで、売上を上げるためにキャンペーンや新サービスを検討すべきでしょうか。

答えは「いいえ」です。施術者が減って売上が下がっているのに、キャンペーンや新サービスを充実させたところで、そもそも施術できる人がいないため、売上は上がりません。

このケースでやるべきことは、施術者の採用でした。もちろんこのサロンでも欠員を補うための採用活動は行っていたのですが、応募が月に1人程度しかなく、なかなか採用が進まない状況だったのです。

つまり、このサロンにとってのボトルネックは「施術者の採用」でした。

他のことは一旦置いて、最優先で採用に力を入れることが、最も効率的に業績を回復させる道だったのです。

提案した採用方法を実践してもらった結果、1か月で目標人数の採用に成功し、売上も一気に回復しました。

施術者が増えたことで施術できるキャパシティも増えたため、その後は集客に力を入れました。キャンペーンや新サービスは、集客に注力するタイミングで検討することになったのです。

事例2:飲食店のケース

もう一つは、飲食店の事例です。こちらも売上を上げたいということで、「Web広告を出してはどうか」というご相談をいただきました。

まず確認したのは、「広告で集客を増やせば本当に売上が上がるのか」という点です。

話を聞くと、実はホールスタッフのベテランが退職し、新人スタッフが増えたことで、お客様からの評価が以前より下がってしまっていることがわかりました。

この状況で集客だけを増やしても、かえって悪い影響が出かねません。つまり、今やるべきことは集客ではなかったのです。

そこで、中長期的にはスタッフ教育に力を入れつつ、短期的にはホールスタッフの関与を抑えた形での売上アップ施策に取り組むことになりました。

2つの事例からわかること

この2つの事例に共通しているのは、「会社の業績を上げるために、今、何に最優先で取り組むべきか」、つまりボトルネックを明らかにしたという点です。

もしボトルネックを確認しないまま安易に集客活動などを進めていたら、逆効果になっていた可能性もあります。

客観的に聞くと「そんなのは当たり前だろう」と感じるかもしれません。

しかし、岡目八目という言葉があるように、人は自分自身のことになるとなかなか客観的に見られないものです。

いざ自分の会社のこととなると、意外と不合理な選択をしてしまっているケースは少なくありません。

4.まとめ

目の前で起きている問題にいきなり飛びつくのではなく、まずは客観的にボトルネックを探すこと。そして、見つけたボトルネックの改善に集中すること。

この流れを意識するだけで、無駄な努力を減らし、効率的に業績を伸ばすことができます。

とはいえ、「自社のボトルネックがどこにあるのか、自分ではなかなか客観視できない」というのは、多くの経営者に共通する悩みです。

今回ご紹介した美容サロンや飲食店の事例のように、外部の視点を入れることで初めて見えてくる本質的な課題も少なくありません。

いま取り組んでいるその努力が、本当に会社全体の成果に繋がっているのか。

一度立ち止まって、社内の「流れ」を客観的に見つめ直してみてはいかがでしょうか。


さらに詳しい情報や個別の無料相談をご希望の方は、メルマガでも情報を発信しています。
興味のある方は、ぜひ登録してみてください。

小さな会社の経営改善のノウハウを知りたい方へ 無料でメルマガを読む
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次