小さな会社には経営が足りない

「経営が足りない」と言われると、「何を言うか、ちゃんと経営しているわ!」と思われるかもしれません。

確かに、製造業であれば日々物を作って売り、従業員にお給料を支払う。サービス業であれば、お客さまにサービスを提供してお給料を支払う。

そうした日々の営業活動は、どの会社でもしっかりと行われているはずです。

ただ、経営のやり方を誰かにしっかりと教わったわけではなく、日々の業務をこなす中で、自己流でなんとか維持しているのが実情ではないでしょうか。

学校の勉強であれば、小学校や中学校の義務教育で最低限のことは教わります。

しかし、特に小さな会社の経営者の場合、経営について学ぶ機会がほとんどありません。

そこで今回は、小さな会社の経営者が押さえておくべき「経営の本質」を分かりやすく解説します。

この記事を読むことで、自己流になりがちだった経営の全体像が整理でき、自社に足りないものと、それを重点的に改善して業績をアップさせる方法が分かります。

目次

経営の3要素「ヒト・モノ・カネ」が実務で機能しない理由

まず、「そもそも経営とは何を指すのか」という基本的な定義から考えてみましょう。

経営の3要素、あるいは経営資源として最も有名な言葉が「ヒト・モノ・カネ」です。

最近ではこれに「情報」を加えた「ヒト・モノ・カネ・情報」という表現も一般的になりました。

語呂が良く覚えやすいため便利な言葉ですが、実は小さな会社の実務においては、少し使いづらい側面もあります。

「ヒト」と「カネ」はイメージしやすいですが、「モノ」とは具体的に何を指すのでしょうか。

一般的には製品の在庫や設備などを指しますが、この「ヒト・モノ・カネ」という概念が提唱されたのは1959年、ある経済学者の著書がベースになっています。

当然ながら、当時と現代とではビジネスを取り巻く環境が大きく異なります。

そのため、現代の小さな会社がこのフレームワークをそのまま当てはめようとしても、しっくりこない原因になってしまうのです。

そこで、中小零細企業の経営に直結する、分かりやすい4つの要素を再定義しました。

小さな会社の経営を支える「4つの要素(4S)」

中小零細企業の経営に必要な要素は、シンプルに次の4つに集約されます。

  • 資金
  • 仕入・生産
  • 販売
  • 組織

これらは英語に直すと、すべて頭文字が「S」から始まります。

資金source(ソース)
仕入・生産supply(サプライ)
販売sales(セールス)
組織structure(ストラクチャー)

これらを総称して、小さな会社の経営を支える「4S」と定義します。

【4Sで診断】自社の経営状態をチェック

ここからは、この4Sのそれぞれの項目について詳細を解説します。ご自身の会社でどこまで実践できているか、ぜひチェックしてみてください。

① 資金(source)

会社は手元の現金(キャッシュ)がなくなれば倒産するため、お金をどのように調達するのかが最も重要な要素となります。チェックポイントは次の2点です。

資金の流れの予測ができているか

「このままいくと、数ヶ月後にキャッシュがいくらになるか」を正確に把握できているでしょうか。

これが分かっていないと、当月になって急激に残高が減少し、慌てて銀行へ融資を申し込むといった事態に陥ってしまいます。

先の予測を立てるために不可欠なのが「資金繰り表」の作成です。決算書や試算表を見るだけでは、未来のキャッシュの流れは見えません。

実際、中小零細企業で資金繰り表を正しく作成・活用している会社は10%に満たないと言われています。

正確な予測を立てるためにも、資金繰り表を作成しましょう。

計画的な資金調達ができているか

「借金は嫌いだから」という理由だけで融資を避け、限られたキャッシュで綱渡りの経営をするのは極めてハイリスクです。

銀行借入なども賢く活用し、常に「月商の3ヶ月分以上」のキャッシュを確保しておくと、安定した経営ができるようになります。

② 仕入・生産(supply)

お客さまに届ける商品やサービスをどのように調達、提供するかということです。

飲食店であれば美味しい料理を作る、製造業であれば良い製品を納品する。

これらは経営者の本業そのものであり、日頃から特に力を入れている部分だと思います。だからこそ、次の2点に注目してください。

仕組み化が進んでいるか

「経営者本人、もしくは特定のベテラン従業員しか対応できない」という状態は、そのまま会社のリスクになります。

マニュアルを整えて誰もが同じ品質で提供できるようにする、あるいは無駄な手作業を省いてデジタルで効率化を進めるなど、属人化から脱却する取り組みを少しずつでも進めることが大切です。

顧客目線を持てているか

その道のプロである経営者ほど、こだわりの品質を追求するあまり「自分たちが作りたいもの、売りたいもの」を押し付けてしまいがちです。

しかし、購入を決めるのはあくまでお客さまです。常にお客さまの立場で「本当に求められているもの」を提供する視点を持つようにしましょう。

③ 販売(sales)

マーケティング、集客、営業、接客など売上を作るためのすべての取り組みです。

実は、小さな会社において最も不足しがちなのが、この「販売・営業の仕組み」です。

実際は、経営者の人脈や営業だけで仕事を取ってきたり、積極的な集客をせずにお客さまが自然に来るのを待っていたりする会社が多いです。

集客から営業までが仕組み化されているか

集客であれば、広告を効果的に運用して自動的にお客さまが集まる導線が作れているか。

SNSを運用する場合も、思い付きの投稿ではなく「どうやってフォロワーを増やし、どうやって成約に繋げるか」という明確な仕組みが必要です。

営業活動も、行き当たりばったりで行うのではなく、目標を明確にし、どのターゲットにどうアプローチして何件の商談に繋げるかを管理していく体制が求められます。

しっかりと販売促進の仕組みを作れている中小企業は多くありません。

だからこそ、ここを強化するだけで他社に大きな差をつけ、業績を伸ばすことができます。

④ 組織(structure)

最後は組織、主に従業員に関する要素です。求人、採用、教育、評価、賃金制度の設計などがこれに該当します。

例えば、以下のような組織図をイメージしてみましょう。

社長をトップとした組織図の例。社長の下に営業部長、経理部長、製造部長の3つのポジションがあり、営業部長の下に営業1課と営業2課、経理部長の下に経理課、製造部長の下に製造1課と製造2課が配置されている組織図。

経営者1人でも「組織」を意識しているか

現在は従業員がいない小さな会社であっても、「組織がない」と考えるべきではありません。

「組織にあるすべての役割(経営、営業、製造、経理など)を、今は経営者が1人で兼任している」と捉えてみてください。

あらかじめ理想の組織図を描き、すべてのポジションに自分の名前を入れておくのです。

そうすることで、将来的に人を増やす段階になった際、「どのポジションに、どんなスキルを持つ人を配置すべきか」という計画的な採用が可能になります。

「忙しくなったから、とりあえず人を雇おう」といった行き当たりばったりの対応による採用のミスマッチや、組織の機能不全を未然に防ぐことが可能です。

人事の仕組みが整っているか

求人、採用、教育、評価、賃金制度、あるいは企業理念の整理やチームビルディングなどが含まれます。

非常に専門性が高い分野であるため、経営者が単独でゼロから構築するのは非常に骨が折れる作業です。

しかし、ここを疎かにしていると、人が増えた時に必ず「人」の問題に苦しむことになります。

この分野については、最初から専門家の力を借りてしっかりと土台を作っておくことを強くお勧めします。

まとめ

今回は小さな会社の経営を支える4つの要素として、資金(source)、仕入・生産(supply)、販売(sales)、組織(structure)の「4S」を紹介しました。

ご自身の会社を振り返り、どこが満たされていて、どこが不足しているかを確認し、足りない部分を重点的に改善していくことこそが、業績アップへの近道となります。

しかし、4Sの各要素(特に資金予測や人事の仕組み、営業の仕組み化など)について、「具体的に自社へどう落とし込めばいいか分からない」「専門的な部分を自力で作るのが大変」とお悩みの場合は、無理をせず専門家に手伝ってもらうのも一つの手です。


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